
社会化期になぜワクチンの話が出てくるの?
社会化期は4週齢~12週齢というごく短い期間で、社会化にとても重要な時期です。しかしそれと同時に、身体も未成熟で、抵抗力が弱いです。生まれてすぐに、母犬から初乳をもらっている時についている免疫も、早い個体だと生後42日(6週齢)頃に失われます。
子犬の社会化、という観点からみると外出したりして様々な環境、生物や無生物に接触させてあげることが望ましいのですが、子犬の健康面からみると、抵抗力が弱い状態で外出するのは感染症のリスクがあります。
ではどうしたらよいのでしょうか。
※これからご説明するのは、ワクチンなどの医療に関わるものです。日々人の医療が進歩するように、動物医療も進歩しています。子犬を迎え入れた際に動物病院で相談し、その時の医療に沿った対応を確認してください。
ワクチンによる抗体と初乳による移行抗体の関係
母犬の初乳をもらうことで、生まれたての子犬は免疫を得ます。この免疫を「移行抗体」と呼び、「移行」と名のつく通り、早くて42日ころ、遅くても150日前後でこの抗体は失われます。
そのため、人の場合も同様ですが、免疫が失われると思われる時期に、何度か繰り返し「ワクチン」を接種します。接種パターンとして多いのが、60日-90日-120日頃に摂取するパターンです。
なぜ短い頻度で何度か繰り返し摂取するのか
まず、ワクチンとは何かご説明しましょう。ワクチンには種類がいくつかあるのですが、ウイルスの毒性をなくしたものや、ウイルスの活性をなくしたものです。つまり、体内に毒性のないウイルスをいれて、免疫と戦わせることで抗体を作っているわけです。
お母さんからもらう「移行抗体」はとても優秀です。ワクチン接種をした場合に体内に侵入する毒性のないウイルスを、移行抗体が退治してしまいます。つまり、免疫が戦うことができず、新しい抗体ができないのです。
短い頻度でワクチンを繰り返し摂取するのは、「移行抗体」が失われた後にワクチンを接種しないと抗体ができないため、「移行抗体」が失われた時に合わせてワクチンを接種するためです。わかりにくいので、例を挙げてみます。
犬の「移行抗体」が80日で失われるとします。そして、ワクチン接種を60日‐90日‐120日に摂取したとします。60日の時点では、移行抗体がまだ残っているのでワクチンの効き目がありません。80日に移行抗体が失われるので、90日のワクチンで抗体が作られます。
本来、仮定では120日の時点でワクチンの抗体は作られているのですが、移行抗体が失われた時期が分かる機器がまだ開発されていないため、ワクチンの抗体が作られているのかは私たちにはわかりません。そのため、120日のワクチンも摂取する、といった具合になります。
ワクチン接種パターンで何度か摂取したのちは、1年に1度繰り返しワクチンの追加接種をします。現在のワクチンは、ワクチンの効果が確約されるのが1年間となっています。
※中には3年に1回でOKというワクチンもあるらしいので、獣医師に要確認してください。効果が薄まる前に、ワクチンを追加接種して、免疫をブースとさせる形になっています。